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溝 NO1

季節は、春から夏へと移り変わっていった。
僕は、最後に朋子と会った後に、2度ほど朋子の家に電話をしたが、いつも不在で、折り返しの連絡もなかった。
季節の流れとともに、朋子のことを思い出す回数も減っていった。
それでも、時々、思い出すと胸の奥に痛みのようなものが走った。
結局、朋子にとって、僕という存在は何だっただろうか?と思うことがあった。
僕と朋子の間にある溝みたいなもの(僕はそれをなんと呼んでいいのかわからなかった)を最後まで埋めることが出来なかった。
僕は、その溝というものがなんなのかを考えた。
僕と朋子との間に存在する差を並べてみた。
男と女。
年齢。
性格。
出身地。
好みの食べ物。
身長。
体重。
いくら並べてもわからなかった。
何処が始まりで、何処が終わりなのかわからないままに、僕達の関係、全てが終わってしまった。
それは、きっと、僕が未熟過ぎたんだろうと、僕は結論付けた。
僕は、大人にならなけばいけない。

晴美とは、月に2~3回デートをし、週に2~3回電話で話をしていた。
僕達の仲が進んでいるのか、止まっているのか、よくわからなかった。
僕達のデートは、映画にいったり、お茶を飲んだり、散歩をしたりしながら二人の時間を過ごしていった。
そして、別れ際に、何時もの公園でキスを繰り返していた。
僕は、一人になると、晴美の身体を抱きたいと強く思った。
でも、二人になるとキスから先に進めることが出来なかった。

やがて、僕と晴美の仲が、道場で噂になった。
夜の公園でキスをしているところを、誰かが目撃したらしく、噂になり、噂が広がるのは早かった。
僕達のことが噂になっていることに気がつかなかったのは、僕達だけになっていた。
やがて、その噂は山崎の耳に入った。
そして、僕は、夜の公園に山崎に呼び出された。



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溝 NO2

「俺を馬鹿にしているだろ。」山崎が言った。
山崎の顔は、怒っているというよりも、何処か悲しげだった。
「なんのことだよ。」
「とぼけるなよ。
 俺が晴美のこと好きなのを知っていて、晴美と付き合っているじゃねえか。」
僕は、何も答えられずに黙った。
「晴美、晴美って騒いでいる俺をみて、お前、腹の中で俺を笑っていただろ。
 お前らが付き合っているなんて知らなかったから、お前の前で騒いじまって、
 俺一人、馬鹿みてえじゃないか。
 ピエロを演じていることにも気がつかない馬鹿なピエロだよ。」
「すまん。
 でも、馬鹿になんてしていない。」
「しているよ。
 おもいっきり馬鹿にしているよ。」
「していないよ。」
「だったら何で、言わなかったんだよ。
 噂でなんて聞きたくなかったよ。
 お前は、人と交わらなかったり、頑固だったり、それでいていい加減だったり、
 変わっているところはあったけれど、基本的にはいい奴だと思っていた。
 本質は、真っ直ぐな奴だと思っていたよ。
 でも、お前は、俺の気持ちを知っていながら、俺に晴美と付き合っていることを
 隠して腹の中で笑う奴だったんだよ。」
「笑ってなんていない。」
「認めるのか?」山崎は、独り言のように言った。
「なにを?」
「晴美と付き合っていることだ。」
「認める。」僕の胸の中に痛みが走った。
「愛しているのか?
 俺が、晴美を想っている以上に、お前は、晴美を愛しているのか?」
山崎は、睨み付けるように僕の目を真っ直ぐに見て、それでも、感情を抑えるように静かに言った。
僕は、黙った。
山崎は、僕の胸倉を掴むと強い力で僕を引き寄せた。
ワイシャツのボタンがはじけ飛ぶのが目の隅に映った。
「晴美を愛しているのか?」山崎の怒鳴り声が響いた。
「何故黙る?
 何故答えねえ?」
僕は、山崎の怒声がまるで自分の声のように聞こえた。
晴美を愛しているのか?
晴美を愛しているのか?
晴美の声が聞こえた。
『私は、朋子さんの代わり?』

僕は、傷つけている。
僕は、多くの人を傷つけている。
僕は、何時も無自覚に、人を傷つけてしまっている。
瑞希。
晴美。
山崎。
きっと、僕は、自覚しないままに、朋子も傷つけていたのだ。

胸の奥に痛みを感じたとき、頬にも痛みを感じた。
山崎の拳が、僕の頬を打った。
一瞬、意識が飛んでしまいそうな強い力だった。
僕は、地面に尻餅をついた。

「俺の痛みは、こんなもんじゃねんだよ。
 噂を聞いたとき、俺は、信じられなかったよ。
 もし、お前が、晴美と付き合うのなら、真っ先に俺に言ってくれると思っていたよ。
 そう、信じていたよ。
 噂でなんて聞きたくなかったよ。」山崎の声は、涙が混じったように擦れ、僕の胸に突き刺さる。
公園の外灯に、歯を食いしばって拳を握りしている山崎が照らし出されていた。

山崎は、僕を睨み付け、吐きかけた言葉を声に出さずに、胸の中に仕舞い込んだ。
僕に背中を向けると、公園の出口に向かって歩き始めた。

外灯の灯りに向かって飛び込む、蝉の羽音が夜の公園にバサバサと響いていた。


春には春の花が咲く春には春の花が咲く
(2009/12/01)
さとう そら

冷え切った夫婦関係、生きがいのない空虚な毎日を送る香が知ってしまったあまりにも甘美な恋……。チャットルームで知り合った香と優一。たがいに家庭を持つ身ながら、二人の恋は燃え盛り深く結ばれる。が、突然優一との連絡が途絶えてしまう。許されざる愛の報いは、かくまでも冷酷なものなのか。約束のない愛だから信じていたい。切ない恋に生きる女の業とやさしさ、潔さそして強さを描いた小説。




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溝 NO3

あの夜の公園での出来事以来、山崎は、道場に顔を出さなくなった。
そして、道場を辞めたと人づてに聞いた。

『噂でなんて聞きたくなかったよ。』
そう言った、山崎の声が、僕の耳に残っている。
一週間が過ぎても、その声が消えることはなかった。
その声を思い出すたびに、胸が痛んだ。
僕が、山崎の人生を変えてしまった気がした。

僕は、大切な人を、知らず知らずのうちに傷つけ失ってきた。
妹の瑞希
初めて恋をした朋子
唯一の友人だった山崎

いつか、晴美まで失ってしまうのだろうか?
晴美を傷つけて、やがて、晴美も僕の前から消えてしまうのだろうか?

突然に、寂しさのような、孤独感が僕を襲ってきた。
もう、何も失いたくないと思った。

一人部屋の中で、タバコに火をつけた。

もう、何も失いたくない。

もう、何も・・・

でも、きっと僕は、また誰かを傷つけ、失い続けて生きていくのだろうと思った。
僕は、きっと何時までも未熟な心を抱えたまま生きていくのだろうと思った。
そう思うと、不意に涙が一つ零れた。
僕は、頬を伝う一筋の涙を、タバコの煙に咽たせいにした。

僕の未熟さを救ってくれるものは、僕の心でしかないと思った。
僕は、自分の未熟さ弱さ甘さ、そういったものを認め向かい合うことでしか、自分を救うものはないのではないかと思った。
それは、苦しい作業だった。
自分の心のどこかに、そういったものを認めたくないとする何かがあった。
僕の心の中は、矛盾で満ち溢れているような気がした。

タバコを灰皿に揉み消すと、立ち上がり晴美に電話をした。
夏休みが始まったばかりの、暑い夏の夜のことだった。

つづく





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溝 NO4

晴美との電話で、来週プールに行く約束をした。
山崎を傷つけながらも、晴美の水着姿を想像していた。
朋子に対する想いが、まだ、心の中に燻り続けながらも、晴美がどんな水着を着てくるのかを想像していた。

『私は、朋子さんの代わり?』と晴美が言った。
『俺が、晴美を想っている以上に、お前は、晴美を愛しているのか?』と山崎が言った。
僕は、どちらの問いかけにも、明確に答えることが出来なかった。
晴美や山崎にとって、僕が答えて欲しい言葉は分かっていた。
その答えを僕が口にすれば、きっと、僕と晴美の関係は、キスよりも先に進めたかもしれない。
もしかしたら、山崎は僕を許してくれて、道場を辞めなくて済んだかもしれない。
今頃、山崎は、『晴美と何処までいったんだよ。』と、うるさく付きまとって来ていたかもしれない。
でも、それは、仮定の話だった。
僕が、明確に答えなかったという事実はもう変えることが出来ない。
それに、僕は、そんな風に上手く、自分に嘘をつくことが出来なかった。
彼らが欲している答えは分かっていても、答えられないものは、答えられなかった。

もちろん、晴美は晴美であり、朋子の代わりになるわけもなかった。
晴美と朋子では、余りにも二人の個性は違いすぎた。
そして、晴美のことは好きだった。
でも、愛と好きの違いが分からなかった。
理屈ではなく感覚的に、朋子と晴美の違いのような気がした。

そして、答えがでないまま、晴美とプールに行った。

つづく

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溝 NO5

7月の終わりの日だった。
朝、目覚めた時から、太陽は強く地上を焼くように照らし続けていた。
ジリジリと音が聞こえてきそうなほど、強い日差しだった。
僕と晴美は、駅で待ち合わせをして、電車に乗ると市内で一番大きなプールに向かった。駅から、プールまでの道は、ここ数年のうちに出来た新興住宅街で、町並みは整然としていて、舗道には等間隔に街路樹が植えられて、僕は、外国映画のセットの様に思えた。
街路樹の木陰を選ぶように、僕と晴美は並んで歩いていた。
海が近く、時折、吹き抜ける風は、潮の匂いを運んで来ていた。
「とても、綺麗な町ね。」晴美が言った。
「全てが、規則正しく並んでいる。」
「どんな人が住んでいるんだろう?」
「毎日を規則正しく過ごせる人かな。」
「たとえば?」
「歯を磨く順番とか、身体を洗う順番とか規則正しく行動する人達。」
「じゃあ、ご飯のおかずを食べる順番も?」
「もちろん。
 全てを決まりごとの中で過ごす。」
「息が詰まりそうね。」
「規則から外れた世界では、自分たちがどう振舞っていいのか分からなくなるんだよ。」
「優一には、とても出来そうにないね。」
「そうかな?」
「そうよ。
 まったく、手順を無視するじゃない。」
「そんなことないと思うよ。」
「思いっきり、手順を無視してるわよ。」
「たとえば?」
晴美は、何かを言いかけて照れたように黙った。
そして「教えない。」と笑いながら言った。
「なに?」
「教えないよ!」
「そこまで言ったんだから教えてよ。」
「い や だ。」と一言づつ区切るように言った。
「教えろよ。」
「知りたいの?」
「気になる。」
晴美は、少し考え込む振りをして言った。
「私のこと、好きって言ってくれないのに、キスをした。
 順番、逆よ!」
そういうと、晴美は、ふざけたように僕を睨んだ。
「こういう風に?」
僕は、隣を歩く晴美の肩を抱き寄せ、ふざけたように頬にキスをした。
晴美の頬は、しょっぱい汗の味がした。
それは、嫌な味ではなかった。

僕と晴美は、真夏の太陽の下で、自分たちの心の奥をふざけるような仕草で誤魔化合っていた。

つづく

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さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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