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かくれんぼ NO3

小学校5年生の僕には、瑞希の死というものに対してどう向き合えばいいのか分からなかった。
僕の中にある、苦しさ、悲しさ、寂しさ、そういった痛みをどう処理すればいいのか分からなかった。
父親も母親も先生も友達も、誰も何も教えてはくれなかった。
皆が、瑞希という存在から逃げるように、瑞希という言葉を僕の前では言わなくなっていた。
父親と母親も、僕の前では、何も言わないけれど、二人になると瑞希の話をし涙を流しているのを知っていた。
それが、僕に対する労わりだと思うには、僕の心はまだ幼かった。
僕の心は、そのことに対してさらに傷ついていた。
夜、一人になると、布団の中で瑞希のことを思い出していた。

晩秋の晴れた日の日曜日の午後だった。
午後に瑞希の病院に行くと、朝から母親に言われていた。
僕は、昼飯を食べると、家を出るまでの時間に、友達から借りた漫画を読み始めた。
『優一。病院に行くよ。』母親の声が玄関の方から聞こえた。
『う~ん。』僕は、あいまいな返事をした。
漫画から離れることが出来なかった。
『早くおいで。』母親の声が、少し苛立っているのが分かった。
『う~ん。』僕は、またあいまいな返事をした。
それでも、僕は、漫画を読み続けていた。
結局、母親に漫画を取り上げられた。
そして、僕は不機嫌になった。
不機嫌なまま、病院に向かうバスに乗り、いつものバス停で降りた。
バス停から、病院の玄関までの道は、落葉樹の枯葉で埋もれていた。
静かな午後だった。
僕は、枯葉に当り散らすように力いっぱい踏みしめながらも、だらだらと歩いていた。
そのことで、また、母親に怒られた。
そして、益々、僕は不機嫌になった。
僕は、不満のぶつけ所が無くなり、心の中で瑞希に毒づいた。
何で、入院なんてしているんだよと。
僕は、瑞希の病名も、その病気が治らないことも知らされてはいなかった。
病室でも、僕は、不機嫌にパイプ椅子に座っていた。
瑞希は、僕の顔を見ると、苦しそうに唇だけで笑った。
母親は、背中が痛いという瑞希の身体を優しく撫でていた。
お湯で濡らしたタオルで、瑞希の身体を丁寧に拭いた。
僕は、それを眺めていた。
パジャマを脱いだ瑞希の身体は、異様に痩せていた。
そして、いつもお喋りな瑞希は、『背中が痛い。』としか言わなかった。
日が傾き始めると、母親は、『夕飯を食べさせて帰るから。』と言った。
僕は、一人先に帰ることにした。
早く、漫画の続きを読みたかった。
僕が、椅子から立ち上がると
『お兄ちゃん。ごめんね。
 お見舞いに来てくれたのに。
 私、苦しくてお話出来なくて、、、
 お兄ちゃん。ごめんね。』と小さな声で言った。
僕は、その声に振り返ることをしなかった。
僕は、一人バスに乗って家に帰った。
病院の玄関を出て、バス停までの道を歩きながら、何か後悔を覚えていた。
僕は、漫画が読みたかったんだ。
瑞希には、また会えるけど、漫画は、明日友達に返さなければいけないんだ。
僕は、自分の心に、そう言い訳をした。
それでも、バスの中で、暗い気持ちになった。
家に帰ると父親と二人で、近所の食堂に行き、ラーメンを食べた。
『瑞希はどうだった?』父親が言った。
『背中が痛いと言っていた。』
『瑞希は喜んだろ。』
『え?』
『いつも、お兄ちゃんに会いたがっていた。
 お兄ちゃんと遊びたがっていた。』
『うん。』
急に心の深いところから、何かが込み上げてきた。
胸が苦しくなった。
熱いものが、目から毀れそうになった。
父親が、ラーメンを啜る音が聞こえた。
『瑞希は、この店の餃子が好きだったな。』父親が言った。
僕は、黙って頷いた。
何か言葉を発したら、心のそこから込み上げてきた、熱い塊のようなものが口から毀れてしまいそうだった。
僕は、自分で理解の出来ない想いを、自分の中に閉じ込めるように唇をかみ締めた。

食事が終わり家に戻ると電話が鳴った。

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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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