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寒椿NO9

その日の空は、鉛色をした雲に厚く覆われていた。
北の国から吹いてきた風は、雪の匂いを微かに乗せて、僕たちを包むように通り過ぎて行った。
朋子は、僕に行き先を伝ないまま切符を2枚買った。
僕は、行き先のわからない切符を1枚、朋子から受け取ると、駅のホームで切符をポケットに仕舞った。
それは、今の自分のような気がした。
僕は、いつも目的地のわからない切符をポケットに仕舞ったまま、時間と言う電車に乗っているようだった。
電車の中でも、朋子は行き先を言わなかったし、僕も聞かなかった。
僕達は、宛てのない会話を繰り返すだけだった。
朋子に連れて行かれたのは北鎌倉だった。
売店も無い寂れた小さなホームには、観光客で溢れていた。
改札に向かう観光客の列の後ろに僕達は並んだ。
列は改札に向かってゆっくりと進んでいた。
並んでいる間、僕達は黙り、列の進む歩調に合わせゆっくりと歩いた。
北風が、ホームを駆け抜けていくと、皆、無口になり身体を固く震わせた。

改札を出ると、朋子は、北鎌倉の駅前にある円覚寺に向かった。
拝観料を払い山門をくぐると、鎌倉五山の一つ瑞鹿山の斜面に沿って、真っ直ぐに伸びた道有った。
道の所々にある庭には、幾本もの梅ノ木が植えられ、小さな紅や白の梅の花が咲き始め、梅の香りが微かに漂っていた。
「梅の花を見たかったの。
 でも、まだ少し早かったみたいね。
 来週ぐらいが本当は見ごろかしら。」朋子が言った。
僕達は、坂道を、まるで暗闇の中を足元を確かめながら歩くように、ゆっくりと登っていった。
「私、梅の花って好きなの。」朋子が言った。
僕は梅の花は、桜と違い、どこか、ひっそりと咲く花だと思った。
時折、強く吹く風に、地面に落ちた花びらが一枚、二枚と舞い上がっていった。
「静かに咲く花だね。」僕が、言った。
「おもしろい表現ね。」
朋子はそう言うと、梅の樹の前で立ち止まり、花弁を人差し指で軽く突っついた。
僕は少し離れたところから、朋子の仕草を見つめていると、急に、胸が締め付けれられる様に切なさが湧き上がってきた。
何処から来るのかわからない切なさに、呼吸が止まってしまいそうだった。
たまらなく、朋子が恋しいと思った。
苦しい程に、朋子のことを愛していると思った。
梅の香りが、僕の心をかき乱しているようだった。
ぼんやりと朋子を見つめて道の真ん中に立っている僕の横を、カメラを手にした観光客が、迷惑そうな顔をして通り過ぎていった。

つづく



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Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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