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溝NO25

僕は、胸の痛みにじっと耐えた。
慣れている。
痛みに耐えるのは、僕は、慣れている。

耐えるのではない。
痛みに気がつかない振りをふりをするのだ。

でも、それは、上手くいかなかった。
僕は、今感じている胸の痛みが何処から来ているのか、理解をしていなかった。
痛みの原因が分からなかった。

「わからない。」僕は、そう言った。
それは、晴美の問い掛けに対する答えというよりも、僕は、僕自身に向かって言った。
僕は、自分が今感じている痛みの元を探すように
「何が幸せで、何が幸せじゃあ無いのか僕にはよくわからない。
 幸せになりたいと思う。
 その幸せというものが、なんなのか僕には分からない。
 瑞希が、幼くて死んだという事実を、僕はずっと受け入れることが出来なかった。
 それは、瑞希が可愛そうってことだけでは無いのかもしれない。
 瑞希が死んでしまう前に、僕は、自分の我侭で瑞希を傷つけてしまった。
 もしかしたら、傷つけていないのかもしれない。
 ただの、僕の思い過ごしなのかもしれない。
 最後に、僕に会えて瑞希は嬉しかったのかもしれない。
 そのことは、もう、誰にもわからない。
 真実は、火葬場の炎の中で、真っ白な灰になってしまった。
 僕の中に残ったものは、傷跡だけだった。
 そして、その傷は、誰が付けた訳でもなく、自分で傷つけてしまった傷だ。
 僕は、ほんとは、とても臆病なんだ。
 僕は、もうこれ以上、自分が傷つくことがとても怖い。」

僕は、そこまで話すと黙った。
自分が何を言っているのか。
自分がいったい何を晴美に伝えたかったのか、分からなくなっていた。

晴美が、僕の顔を覗き込むように見た。
その目は、何処か潤んでいるようだった。

「なんて言っていいのか分からないけど、誰だって、傷つくことは怖いわ。」晴美が言った。

「うん。」僕は、小さく頷いた。
そして、違うと心の中で思った。
違う。
違う。
僕は、そんな一般論を晴美に伝えたかったのでは無かった。

いつだってそうだった。
僕は、僕が抱えているものを上手く他人に伝えることが出来なかった。
心の中に有る思いを、口に出したとたん、それは何か白々しいものになり、正確に相手に届くことが無かった。

晴美は、じっと僕を見詰めていた。

「私、優一が考えていることがわからなくなる時があるの。
 優一は、いつも、何か大切なことを自分の中に抱え込んで、一人で考えて、一人で処理をしようとしている。
 自分のなかで答えが出るまで、私には、何も言ってくれない。
 優一の心の中は、きっと、私なんかより遥かに複雑で、傷つきやすくて、それでいて強いんだと思うの。
 でも、時々、そんな優一に触れると、優一が隣にいるのに寂しくなるの。
 優一は、きっと、私なんかよりも、ずっと辛い何かを背負って生きてきたのは、なんとなく理解できるわ。
 でも、私は、生身の何処にでもいる普通の女の子なの。
 優一が、傷つくように、私だって傷つくの。
 それは、優一にとっては、大した傷ではないかもしれないけれど、私にとっては、とても大きな傷なの。」

「ごめん。」僕は、一瞬の間を置いて言った。

晴美は、静かに首を振った。
晴美の髪が、僕の頬をかすめた。

「優一は悪くない。
 だから、そんな風に自分を追い詰めないで。」

つづく


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さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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