スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

春と修羅NO5

一月にしては、暖かな日差し僕たちを包んでいた。
駅から動物園に向かう、急な坂道を並んで歩いていた。
道の両側に立ち並ぶ桜の樹は、まだ、蕾も付けてはいなかった。
「春に来たら、素敵な場所ね。」朋子が桜の樹を見ながら言った。

朋子の言葉で、心の奥底に閉じ込めた、思い出が湧き上がって来た。
この場所に、最後に来たのは、春だったんだ。
坂道の両側に、満開の春の花が咲いていた。
時折吹く、春の風に桜の花びらが舞い、舗道を桜色に染めていた。
あの日、僕たちは、4人で来たんだ。
父親と母親と瑞希と僕の4人で来たんだ。
僕が、何歳の時だんだろう?
確か、瑞希は、幼稚園の年少か年中組だった。
僕は、小学校の3年か4年だったと思う。
思い出した。
思い出したよ。
僕たち家族は、世間並みの幸せの中にいたんだ。
そうだ、あの場所だ。
あの桜の木の下だ。
その場所で、僕達はお弁当を食べたんだ。
桜の花びらが舞う中で、お弁当を食べたんだ。
瑞希は、桜の花びらを追いかけるように走っていた。
僕は、宙に舞う花びらを掴んだ。
瑞希の前で、そっと手のひらを開いた。
僕の手のひらに、一枚の小さな花弁が乗っていた。
瑞希が、それを掴もうとする。
小さな指が、僕の手のひらに近づく。
突然の風に、花びらは青空に舞い上がった。
瑞希は、掴み損ねた手を振りながら「お花さん、バイバイ。」と言った。
あの場所に戻りたい。
もう一度、あの場所に戻りたい。
ふっと、そう思った。
でも、もう二度と戻れない。
僕達の人生は、片道切符の銀河鉄道に乗っているようだと思った。
”私の、全ての幸せをかけて願う”
ふと、宮沢賢治の言葉が心に浮かんだ。

僕は、自分の思いを朋子に悟られないように、「きっと、桜が満開だよ。」と言った。
「そうね。」と言って、朋子が黙った。
何かを考えながら歩いているようだった。
そして、僕も黙った。
何を言っていいのか分からなかった。
「さっきも、また、遠くを見ていたわ。
 いったい、優一君は、何を抱えているの?」朋子が言った。
僕は、瑞希の事を話そうか迷った。
でも、そのことを上手く朋子に伝えられる自信がなかった。
何をどう話していいのか、言葉が浮かんでこなかった。
僕は、黙った。

突然、北風が吹き、僕たちを通り抜けていった。
動物園の入り口に着いていた。

つづく

blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!

にほんブログ村 小説ブログへ
他の人の小説も読んでみてください!


スポンサーサイト

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

カテゴリ
小説を読むときは、かくれんぼ から読んでください。
最新コメント
ランキング
ランキングアップに協力を!! どれか一つでもクリックしてくれると嬉しいです!!
訪問をお知らせください
おきてがみ
ブログパーツ
カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
4628位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
1209位
アクセスランキングを見る>>
yahoo
人気記事
表示は新着順なので、ブログの記事に直接リンクしてどんどん登録してください。
最新記事
最新トラックバック
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ
アクセスアップサービス
月別アーカイブ
フリーエリア
マイクロアド
時間があったらクリックたちよりしてね
おこづかいゲット!
ペット
自動リンク
自動でリンクが増えていきます
検索フォーム
NINJA
簡単にポイントたまります。
忍者アド
植林活動
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
ブログ広告
ブログ広告ならブログ広告.com
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
サンプル・イベント・モニターならBloMotion