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溝 NO6

僕は、紺色のトランクスタイプの水着に着替えて晴美が更衣室から出てくるのを、プールの端っこに有った喫煙所でタバコを吸いながら待っていた。
何人もの女性たちが水着姿で、僕の前を通り過ぎていった。
僕は、なんとなく目のやり場に困り、遠くの大きな雲の形を眺めていた。
青い空が眩しかった。
あの青い空の遥か上空に、真っ黒な宇宙があることがなんだか信じられなかった。
空を見上げていると、僕が立っている、この大地が全ての中心で、大地の周りを星が回っているのがやはり正しいような気がしてしまった。

「よっ!不良少年!」晴美に突然声を掛けられた。
「空が回っている。」
僕は、咄嗟にそう言いながら晴美を見た。
晴美は、赤い花柄のワンピースの水着を着て、僕の言葉に不思議そうな顔をして立っていた。
晴美の水着は、なんとなく子供っぽく思えた。
「今、エッチな目で私を見たでしょ。」晴美が笑いながら言った。
「似合うよ。」
「ほんと?」
「うん。」
ある意味、子供っぽい水着は、まだ、子供っぽい体型の、大きな浮き輪を持った晴美に似合っていた。

僕達は、プールに入ると、小熊の兄弟のようにじゃれ合い、ふざけ合っていた。
その度に、晴美は、大きな声で騒いでいた。
晴美が、ふざける様に、僕の背中におぶさって来た。
背中に2つの小さな柔らかい膨らみを感じた。
僕の身体の一部が、自分の意思とは無関係に固く元気なった。
僕は、自分の身体の反応に少し慌てると水中でバランスを崩し、晴海を背負い投げするような形になり、二人抱き合うように水中に潜った。
水面に顔を上げたとき、晴美は僕に抱きつき、僕の腕は晴美の腰を抱きしめていた。
僕達は、慌ててお互いの身体を離した。
一瞬、気まずい雰囲気が二人の間に流れた。

僕達は、その後、何も無かったように振る舞い夏の一日を楽しんだ。

つづく

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溝 NO7

プールの脇に出ていた屋台でカキ氷を食べた。
屋台の横にある縁台に並んで座って、僕がメロン味で、晴美がイチゴ味のカキ氷を食べた。
海からの風が、そよそよと吹いていた。
入道雲が、海から湧き上がるように空に浮かんでいた。
大きな鳥が一羽、空に円を描くように飛んでいた。
「ねえ。」晴美が言った。
「なあに?」
「さっき、びっくりしちゃった。」
「なにが?」僕は、晴美が何を言いたいのか想像ついたが、照れくさくとぼけた。
晴美は、僕の股間を一瞬見ると「大きかった。」と耳打ちするように小声で言った。
「ばれた?」
「うん。お腹に、硬いの当たったよ。」
「そっか。」
「あんなに、なっちゃうの?」
また、晴美は僕の股間をチラッと見た。
その度に、晴美の声は小声になった。
「なっちゃうよ。」
「ねえ。」
「なあに?」
「私と、エッチしたい?」
「したくないと言ったら嘘になるかな。」
晴美は、何かを考えるように黙った。
そして、何かを決めたように言った。
「ほんとうに、優一が、私のことを愛しているなら、    いいよ。」
僕には、晴美の言葉が、自分の大切なものを、本当はあげたくないんだけれど、好きな人が望むなら好きな人に捧げる。
そんな風に聞こえた。
僕のその理解は、大きく間違っては無いけれど、けっして正しくもなかった。
本当はあげたくないのではなく、本当はあげたいのだけれど、私だけを欲しがっているのか貴方の心が分からないのだった。
僕は、女性が男性に抱かれる心理というものをまったく理解していなかった。
女性にも、男性と同じように性欲があるということも、その性欲は、男性と女性では違いがあることもまったく理解していなかった。

結局、僕と言う存在は、いつも自分のことしか考えていないのかもしれない。
他人のことを考えているようで、実は、自分のことばかりを考えていたのかもしれない。
僕は、少し黙ったあと。
「晴美の、その気持ちを大切にするよ。」と言った。
晴美は、無言で頷くと、僕の手を握った。

僕は、真夏の太陽の下で、男と女の間にある溝のようなものの埋め方が分からずに、晴美の手の柔らかさを感じていた。
目の前の食べかけのかき氷は、解け始めていた。

つづく

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溝 NO8

八月に入ると、街に祭りがやってきた。
屋台が並び、焼きそば、たこ焼き、お好み焼き、雑多な匂いが祭囃子の音色と同化し大気の中に混じりあっていた。
僕は、一人で、家族連れや恋人たちに混じって雑踏の中を歩いていた。
何か宛があったわけではなかった。
なんとなく、一人で歩きたかった。
黒のリーバイスのスリムジーンズに、赤いアロハシャツと赤いコンバースのバスケットシューズを履き、大人になったつもりで、ジーンズのポケットに両手を突っ込んだまま人ごみの中を歩いていた。

客観的に見て、その姿は、大人というよりもただのチンピラである。
その時の僕には、少し粋がった格好をして街を一人、誰ともつるまずに歩くことで、自分が少し大人になったような気がしていた。

陽はビルの陰に落ち始めていた。
それでも、街は熱気に溢れていた。
歩いていると、汗が額に滲んでくる。

僕は、ビリージョエルのPIANO MANを口ずさみながら、小走りに点滅した青信号を渡る。



人ごみを避け、路地裏へと向かった。
飲食店が立ち並び、エアコンの室外機から、騒音と共に熱風が吐き出されている。
人気の無い場所に立ち止まると、ジーンズのポケットから、皺くちゃになったハイライトを取り出すとジッポのライターで火をつけた。
オイルの匂いが、一瞬、立ちこめ、吐き出したタバコ煙にかき消された。
張り込み中の刑事のように、電信柱に寄りかかりタバコを吸った。
ぼんやりと、通りの人ごみを見ていた。

朋子が、先ほど渡った横断歩道の向こう側を歩いていた。
すぐに、人ごみの中に紛れ視界から消えた。
見たのはほんの一瞬だった。
間違いが無い。
間違えるわけが無い。
朋子だ。

僕は、信号が青なのをかくにんすると、タバコを地面に投げ捨てバスケットシューズで踏みつけ揉み消し、走り出そうとした。

その瞬間、突然、後方から見知らぬ男性に腕を強く掴まれた。


つづく

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溝 NO9


僕は、腕を掴んだ人を振り向いた。
スーツ姿の見知らぬ男性が3人、僕を見詰めて立っていた。

僕は、3人の男性と朋子が消えた場所を交互に見た。

朋子がいってしまう。
早く行かなければ、朋子がどこかにいっていしまう。

「高校生だな。」僕の腕を掴んでいる男性が、落ち着いた声で言った。
隣の男性が、スーツの胸ポケットから、僕に手帳を見せた。
手帳には、警察庁と書かれていた。
「少年課だ。」手帳を出した男が言った。

僕は、手帳を見た後、もう一度、朋子の消えた場所を見た。
朋子を見失った場所の少し先に、朋子の後姿が見えた。
朋子は、誰かと歩いていた。
その相手は、僕からは人影で見ることが出来なかった。

追わなければ。
朋子を追わなければ。
今、追わなければ、僕は永遠に朋子に追いつけない気がした。
僕の心が焦れ始めていた。
通りを挟んだ向こうに、朋子がいる。
この信号を渡れば朋子に会える。
僕は、目の前にいる3人の刑事を見た。

歩行者用の信号が、赤から青に変わるのが目の隅に見える。

「高校生だな。」
腕を掴んでいた男が、先ほどよりも強い口調でもう一度言った。
「何処の高校だ?」警察手帳を僕に見せた男が言った。

僕は、何も言わずに彼らを見詰めながら、目の隅に写る信号機を見ていた。
青信号が点滅を始めた。
朋子の後ろ姿が人ごみに消えそうになる。

僕は、覚悟を決めた。
男の手を一気に振り払った。
腕を掴んでいた男の手が外れた瞬間に、僕は、走った。
青信号が点滅している、横断歩道に向かって全力で走った。

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テーマ : 自作恋愛連載小説
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溝 NO10

「待て!」
「止まれ!」
強い命令口調の声が背後から聞こえる。
僕は、その声を無視する。

男たちが、僕を追いかけてくる気配がした。
横断歩道を渡ろうとしたとき、信号が青から赤に変わった。

僕は、信号を無視して、一気に横断歩道を駆け抜けようとした。
走り出そうアクセルを吹かした車から、クラクションが鳴る。
僕は、それも無視して走る。
朋子のもとへ。

行かなければ。
今、行かなければ。
それだけを考える。

後ろは振り向かなかった。
彼らが追いかけてきているのかどうかなんて、気にならなかった。
前だけを見て、朋子を追いかける。
僕は、朋子を見失った場所に向かって人ごみを縫うように走った。
何人かの人にぶつかった。
怒鳴り声が、僕の背中に浴びせられる。

僕の心は、自分勝手になっていた。

朋子がいた。
人ごみの中に、朋子の後姿が見えた。
人ごみを掻き分けるように、朋子のもとに行こうとしたとき、後ろから羽交い絞めにされた。
僕は、身体に回された男の腕を振り払おうと足掻いた。
男の力は強かった。
「おとなしくしろ。」男が僕の耳元で叫ぶ。

僕は、追いついて来た、3人の男たちに押さえられた。

僕の周りが騒然とする。
僕と、3人の男たちを取り囲むように興味深げな人垣が出来る。
「離して。」僕は、身を捩りながら言った。
「おとなしくしろ。」男がもう一度怒鳴った。
朋子の後ろ姿が消えていた。
朋子が消えた。
「離せ。頼む。離せ。」
男たちの力は強かった。
気がつくと、僕は、地面に組み伏せられ、3人の男に取り押さえられていた。

朋子が見当たらない。
僕の視線の何処にも、朋子がいない。

「朋子。」僕は、腹の底から力いっぱい、僕の持っている声の限りを使って叫んだ。
その声は、祭囃子と人々の喧騒にかき消されていた。

つづく

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プロフィール

さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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小説を読むときは、かくれんぼ から読んでください。
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