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かくれんぼ NO6

僕は、高校に入ると中学の時とは、人が変わったように、目立たない生徒になった。
他人との係わり合いに、煩わしさを感じた。
「兄弟はいるの?」
特に、この質問が嫌いだった。
兄弟がいるとも、兄弟がいないとも答えたくなかった。
正確に言えば、昔兄弟がいたなのだが、その後の説明を他人にしたくはなかった。
あれから、5年近くたった今でも、瑞希のことは自分の中で整理が出来ていなかった。
そんなことを、他人に話したくはなかった。

いつのまにか、僕はクラスの中でもあまり喋らず、休み時間になるといつも一人、本を読んでいた。
太宰治
夏目漱石
三島由紀夫
島崎藤村
芥川龍之介
高校生の僕が、何処まで理解して読んでいたのかは分からないが、古い作家の本を好んで読んだ。
僕は、早く、大人になりたくて、背伸びをしていたのかもしれない。
それでも、太宰治の”人間失格”と夏目漱石の”それから”に強く心を引かれた。

僕は、弱い。
僕の心は、とてつもなく脆い。
僕は、自分の脆さを心の中に押し込んでいった。
早く大人になりたかった。
大人になるということが、具体的にどういうことかは明確に話をすることが出来なかったが、
漠然と大人になりたいと思っていた。
早く一人で生きていけるようになりたかった。
一人で生きていける強さを手に入れたかった。

高校に進学すると、家から2駅ほど離れた場所にある、空手道場に通い始めた。

そして、僕は、朋子と知り合った。

つづく


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告白NO1

僕が、空手を始めたのは、特に空手が好きだというわけではなかった。
本当は、何でも良かった。
放課後、早く学校をでる言い訳が欲しかった。
それは、クラスの仲間に対する言い訳であり、自分に対する言い訳でもあった。
クラスの仲間と、放課後まで一緒にいたく無いと思った。
何かが有った訳ではなく、特に嫌いという訳でもなく、なんとなく、一緒にいるのが煩わしかった。
一人になれる、何かが欲しかった。
団体競技でなければ、空手でも柔道でも剣道でもなんでもよかった。
たまたま、その道場を見つけただけだった。

初めて、道場に行った時、一人の女性に目を奪われた。
彼女は、普通に立っていると目立つ存在ではなかった。
体型も顔も髪型も、全てが普通だった。
彼女は、片隅に白い道着を着て一人で立っていた。
そのただ立っていいる姿に、僕は、目を奪われた。
上手く表現出来ないが、自然な感じを受けた。
彼女は突然、動き始めた。
静から動へ切り替わる、その瞬間を見たとき、僕は、その姿に目を奪われた。
一つ一つの動作がしなやかで、静から動、そして動から静へ繰り返し動いていた。
空手の型というものを始めて見た。
その美しさに、僕の心臓は大きな音を立てた。

朋子は、僕よりも3歳年上の専門学生だった。
朋子に憧れのような物を感じ初めていた。
僕は、朋子のその姿を見るために、日々、道場に通った。
けれども、朋子と二人で話をする機会は無かった。
何度か一緒に帰る事は有ったけれども、何時も誰かが一緒だった。
その時、僕はまだ、どういう風に恋愛を進めていったらいいのかも分からなかった。
憧れと、思春期に異性に感じる妄想だけを抱えて朋子を眺めていた。

道場に入門をして、半年ほど過ぎた10月のことだった。
練習を終わった後、帰ろうとすると雨が降っていた。
細い静かな雨が降っていた。

つづく


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告白NO2

突然降り出した雨に、僕は、傘を持っていなかった。
道場の玄関で、空を見上げている僕に声がかかった。
「傘、無いの?」朋子の声だった。
僕は、声の方を振り向いた。
朋子が、僕を見ていた。
「持ってこなかった。」
「入る?」朋子が、赤い傘をさしながら笑顔で言った。
「この位なら大丈夫。」僕は、照れ隠しに強がった。
そして、雨の中を歩き出そうとした。
朋子は、僕の頭の上に傘を差し出しながら「風邪ひくわよ。」と言った。
そんな僕たちを見て、他の道場生から、からかいの声があがった。
「恋人同士みたいだな。」そんな声が、僕の耳に届いた。
僕は、そう言われることが嬉しかったけど、どう対応していいのかわからなかったから
聞こえない振りをした。
僕は、朋子から傘を受け取った。
一瞬、僕の指が、朋子の指に触れた。
それだけで、僕の心臓は高鳴り、朋子の指の感触がいつまでも残っていた。
「ありがとう。」僕が、言った。
「え?」
「傘入れてくれて。」
「私の傘に入るのは、高いわよ。」朋子が笑いながら言った。
「お礼します。」
「冗談よ。」
「はい。」僕は、照れたように言った。
「可笑しい。まじめなのね。」また、朋子が笑った。
「まじめですか?」
「まじめじゃないの?」
「自分では、分からないです。」
僕は、朋子が濡れないように傘をさした。
僕達の歩く速度が、いつもより遅くなり、皆から遅れ始めていた。
少しづつ皆の姿が小さくなっていった。
時折、朋子の肩が、僕の肩に触れた。
僕の意識は、自分の肩に集中した。
「皆から、随分遅れちゃったね。」朋子が言った。
「急ぐ?」急ぎたくなんかなかった。
このまま、一つの傘の中、二人で歩いていたかった。
霧のような雨が、僕たちだけの世界を作ってくれているようだった。
「急ぎたい?」朋子が言った。
「別に。」僕は、ぶっきら棒に答えた。
僕たちは、初めて二人っきりになった。
二人っきりになると、どう対応していいのか分からなかった。
照れ隠しに強がることしか、僕には出来なかった。
「別になの?」朋子が、僕の方を少し見上げるように言った。
「急ぎたくないです。」
「そう。素直な心を言葉にしたほうがいいわよ。」
朋子はそう言うと、軽く僕の肩を叩いた。
僕は家に帰っても、朋子に触れられた残像記憶が肩に残っていた。
叩かれた部分が、いつまでも温かかった。
「濡れているじゃない。」
朋子が、僕の肩を見て言った。
「傘がほとんど、私の上にあるわよ。」朋子が傘を見上げながら言った。
「やさしいのね。」朋子が、僕を見た。
僕は、上手く答えられずにうつむいた。

駅に着くと、先を歩いていた道場生は、誰もいなかった。
僕たちは、どちらから誘うわけでもなく、駅前の喫茶店に入った。



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告白NO3

喫茶店の中は、人影まばらだった。
クラッシクのピアノの曲が、ボリュームを落として流れていた。
聞いたことがあるような気がしたが、僕には、作曲者も曲名も分からなかった。

僕たちは、窓際の席に座り、コーヒーと紅茶を注文をした。
僕は、朋子の顔を直視できずに、窓の外を眺めた。
電車が到着したのか、多くの人が改札を通り過ぎて行った。
「こっちを向いて。」朋子が言った。
「お話を顔を見ながら話すものよ。」
「ごめん。」
「素直ね。」朋子が笑った。
「慣れていない。」
「女の子と話すことが?」
「女性と二人で話をすること。」
「じゃあ、今日は、その練習だね。」
練習ではなく、僕にとっては本番だと言おうとして止めた。
「ショパン。」
「ショクパン?」
「違うわよ。この曲 ショ パ ン。」朋子は笑いながらもう一度言った。
「知らない。なんだか、雨の匂いがする曲。」
「上手いわね。優一君は、どんな音楽が好きなの?」
「イーグルス。ビリージョエル。それからジョンレノン。」
「ホテルカリフォルニアは、私も好きよ。」
この瞬間に、ホテルカリフォルニアが、僕の中で一番好きな歌になった。
「でも、他はあんまり知らないわ。」
「朋子さんは?」
「ユーミンとか、中島みゆきとか、小田和正とかかな。聞いたことある?」
「有名な歌なら知ってる。」
「中島みゆきのファイト!って歌が凄く好きなの。知ってる?」
「知らない。」僕は、首を振った。
僕は、何にも知らないと思った。
ショパンも中島みゆきも何も知らない。
ピアノの音色が、店の中を包んでいた。

つづく

レノン・レジェンド~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ジョン・レノン~レノン・レジェンド~ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ジョン・レノン~
(2004/11/17)
ジョン・レノン

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イマジン・スタンド・バイ・ミー・ハッピー・クリスマス(戦争は終った)
好きな曲が3曲も入っています。
愛と平和!!!


ホテル・カリフォルニアホテル・カリフォルニア
(2005/12/21)
イーグルス

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あまりに有名な曲ですね。ギターの音色が最高に泣かせます。時代が変わっても歴史に残る曲だと思います。


ストレンジャーストレンジャー
(2006/04/19)
ビリー・ジョエル

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最高傑作だと思います。
特にストレンジャーは、聞いていて切なくなり胸が締めつられようです。
本当に、お勧めです。


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告白NO4

その後、僕たちは、身近な話をした。
朋子は、女子高を卒業した後、専門学校に入り、今、経理の勉強をしていると言った。
「どんな勉強をしているの?」
「そうね。」朋子は少し考えてから「貸借対照表の見方とか。」と言った。
「退職対処法?」
「違うわ。今から老後の対処法を勉強してどうするのよ!」朋子が笑った。
「優一君は、時々面白いことを言うのね。」
高校1年生の僕には、経理の勉強というものがどういうものか見当も付かなかった。
僕の知らないことを知っている、朋子が随分と大人の気がした。
だから、僕は、コーヒーに砂糖もミルクも入れずにブラックで飲んだ。
苦さが口の中に残り、美味しいとは思わなかったが、その苦さを我慢することが、大人だと思った。
少しでも、朋子に近づきたかった。

次に、僕たちは、嫌いなものについての話をした。
「私の一番嫌いなものは、お喋りな男性。」朋子が言った。
僕は、お喋りな男性に含まれるのだろうか? 少し考えた。
自分が、他者にどう見られているのか、自分では、よく分からなかった。
「優一君は?」朋子が聞いてきた。
「お節介な人。」
朋子は、少し間を空けてから、「私が、傘に入れてあげたのもお節介かな?」と言った。
急に心臓が、高鳴った。
違うと言いたかった。
「親切。」と僕は、短く言った。
「上手ね。」
僕は、朋子に褒められた気がして、嬉しくなった。
「何か、一方的に自分の考えを押し付けてくる人。」
「たとえば?」
「まじめに勉強をして、有名な大学に入り、大きな会社に勤めることが幸せなんだって
 押し付けてくる先生。」
「勉強は嫌いなの?」
「学校の勉強は嫌い。」
僕は、そんな会話を繰り返しながらも、心の中では、朋子をデートに誘いた思いで一杯だった。
でも、それを、切り出すことが出来なく時間だけが過ぎていった。
僕たちは、他愛の無い会話を繰り返していた。
結局、僕は、朋子をデートに誘うことが出来ずに、喫茶店を出た。
店を出ると、雨は、上がっていた。
僕は、駅から2駅分電車に乗り、朋子は、駅から5分ほど歩いた所に家があった。
そして、僕たちは、改札口で別れた。
「バイバイ。」朋子が、手を振りながら言った。
家まで送るよ。
僕は、その言葉を飲み込んだ。
「バイバイ。」と言いながら、改札の中に入って行った。
ホームに向かう階段を上りながら、意気地なしと小さく自分に向けて呟いた。

つづく


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プロフィール

さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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