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告白NO6

1985年が終わり、1986年が始まった。
元旦に道場生達6人と、鎌倉の八幡宮に初詣に行った。
その中に朋子がいた。
毎年の事だけれど鎌倉は、初詣の人で混み合っていた。
八幡宮に向かう真っ直ぐな参道を歩く人は、アヒルの行進の様によたよたと歩いていた。
整理係りの人が、マイクで何かを叫んでいた。
僕達は、人ごみの中で、バラバラになり、それぞれが歩きやすい方法で、歩きやすい
場所を歩いていた。
人ごみに押される振りをしながら、さりげない風を装って朋子に近づいた。
朋子は、赤いフードの付いたハーフコートを着ていて人ごみの中で見つけやすかった。
僕は、見失わないように朋子の隣を歩いた。
黙って並んで歩いているだけで、僕は、胸が高鳴った。
二人で、初詣に来たような気分になっていた。
時折、人波に押されるように朋子の肩が僕の肩に触れる。
その度に、胸の奥から甘い痛みが湧き上がった。
もっと、ゆっくり。
もっと、ゆっくり、この人の列が進めばいいのにと思っていた。
鳥居をくぐり抜け、階段を上がると境内に出た。
ポケットから10円玉を取り出し、賽銭箱に放り投げ、両手を合わせる。
僕の頭の中は、真っ白になる。
何を、願っていいのか分からなくなる。
何も浮かばない。
隣で両手を合わせている、朋子の願いだけが気になる。
僕は、何も願い事をすることが出来ずに、押されるように、その場から立ち去った。
それでも、僕は、朋子と同じ空間にいると言う事が嬉しかった。

つづく





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告白NO7

僕たちは、参拝が終わると、小町通を通って鎌倉駅に向かった。
鎌倉駅から、江ノ電に乗り江ノ島へと向かった。
2両編成の、小さな電車は、初詣客でに賑わい満員状態だった。
単線の小さな電車は、民家の軒先をガタガタと走っていった。
僕は、町の中をのんびりと走るこの電車が好きだった。
電車の窓から手を伸ばせば、軒先の洗濯物に手が届きそうで、町と一体化をしているようだった。
僕は、混雑している電車の中で、朋子と少し離れた位置に立っていた。
朋子は、道場生の池田さんという男性と、楽しげに話をしていた。
僕は、二人の会話が気になっていたが、何を話しているのかは、聞こえなかった。
池田さんが、朋子に何かを楽しげに話し掛けた。
朋子は、それに答えるようにクスクスと声を殺して笑っていた。
僕の胸の中がざわめいた。
僕は、その時、それが嫉妬という感情だと認識をしていなかった。
ただ、池田さんと楽しげに会話をして欲しくないと思った。

江ノ島駅に着くと、ほとんどの乗客が降りた。
僕も、見知らぬ乗客に押されるように電車を降りた。
プラットフォームが、乗客で一杯になった。数人を残して空になった電車は、発車のベルが鳴り終わるとドアを閉じ、藤沢に向かって走り去っていった。
改札を出て、お土産物屋が並ぶ小さな商店街を抜け、国道を渡る地下道を潜ると海が現れた。
江ノ島に向かって、真っ直ぐに海の橋が架かっている。
橋は、江ノ島に向かう車で渋滞をしていた。
僕たちは、歩いて橋を渡った。
橋の上から海を見ると、何処までも、何処までも、海岸線が続いている。
海は、太陽に照らされ波間が、眩しいくらいに輝いていた。
僕は、同じ年の山崎と話をしながら歩いていた。
朋子は、僕と同じ高校生の晴美と並んで、僕の少し前を歩いていた。
僕の心は、朋子が晴美と話をしていることで落ち着いていた。
「なあ、どっちが好みだ?」山崎が、前を歩く、朋子と晴美をこっそり指差して僕に聞いてきた。
僕は、返事に戸惑った

つづく

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江ノ電での鎌倉-江ノ島間は、なにかほのぼのとして、とても好きです。
山があり、海があり、そして歴史があり、一人ぷらぷら散歩もいいし、色々な楽しみ方があります。
紅葉の季節ですね。


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告白NO8

「俺さあ、晴美を狙っているんだよ。」山崎が屈託無く、でも小さな声で言った。
「晴美って。かわいいよな。どう思う?」山崎は、嬉しそうに言った。
「まあ、明るくっていい子だよな。」
「お前さあ、ほんとクールだよな。」山崎が、僕の方を見て言った。
「別に、クールじゃないよ。」
「まあ ってさあ。そういう言い方自体がクールだよ。
 とにかく、晴美には、興味ないんだな!」
「まあな。」僕は、頷いた。
「ほんと冷静に言うな。
 でも、安心したよ。」
江ノ島に架かる橋を渡りきると、両脇にお土産物屋と食堂が並ぶ、細い坂道を登った。
僕は、この道がなんとなく好きだった。
なんだか、懐かしい匂いが、潮の香にまじってするような気がした。
朋子は、晴美と楽しげに、お土産物屋の軒先に飾ってある貝殻や饅頭を指差しながら歩いていた。
僕は、そんな朋子を後ろから見つめながら歩いていた。
山崎は、相変わらず晴美の何処が可愛いかを、熱く語っていた。
まるで、もう、自分の彼女になっているかのようだった。
「お前さあ。」山崎が言った。
「なあに?」
「朋子さんを、晴美から引き離してくれよ。」
「なんで?」
「分かっているだろ。」山崎は、そう言いながら嬉しそうに、肘で僕の脇腹を小突いた。
「告白するのか?」僕は、驚いたように言った。
「当たり前だろ。
 ここ何処だと思っているんだよ!
 江ノ島だぞ!え・の・し・ま!
 海だぞ!う・み!
 女ってな、こういう状況で告白されると弱いんだよ。」
「そういうもんか?」
「そういうもんだよ。
 『山崎さん 素敵!!ロマンチックね!!』 チュ なんてさちゃったらどうしよう!
 たまんねえな!
 アハハハッ」
「お前、バカか?」
「お前こそ、何、冷静な顔をしているんだよ。」
「とりあえず、俺が、朋子さんに声を掛ければいいんだな。」
「そうしてくれ。今度、コーヒー奢るよ。」
「悪いな!」
「缶だけどな。」
「随分、安いな。」
「今月、ピンチなんだよ。」
「上手くできるかな?」僕は言った。
「大丈夫だよ。
 この前、アイアイ傘で帰ったじゃないか。」
「まあな。」僕は、照れ隠しに曖昧な返事をした。
内心は、ドキドキしていた。

山崎のためだ。
山崎のため。
僕が、朋子と話をしたいからじゃない。
自分に何度も言い聞かせた。
僕は、朋子に話し掛ける機会を伺っていた。

つづく

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告白NO9

僕たちは、江ノ島神社から長い階段を上り展望台へと向かった。
その間、僕は、朋子と二人で話をする機会は無かった。
途中休憩を挟みながら、江ノ島の橋を逆に渡った。
橋を渡ると、海岸に下りる広い階段があり、僕と朋子は、階段に腰掛けた。
やっと、二人になれた。
山崎を見ると、晴美とは二人きりになれずに4人で海岸を散歩していた。
僕は、もう山崎のことなんてどうでも良くなっていた。
太陽は、西に傾き始めていた。
朋子が、こうして僕の隣に座ってくれていることが嬉しかった。
「今日は、いっぱい歩いたね。」朋子が言った。
「疲れた?」
「こう見えても、結構、丈夫なのよ。」朋子が笑いながら言った。
「こう見えてもね。」僕も笑って言った。
「こないだ嫌いなものの話をしたよね。」朋子が言った。
「うん。」
「今度は、好きなものの話をしよっか。」
「いいよ。」
「好きな食べ物。私はパスタ。」
「お茶漬けときんぴらごぼう。」
「爺さんみたい。まさか、好きな歌は演歌じゃないよね。」朋子が笑いながら言った。
「ビリージョエルとジョンレノン。」
「あんまり良く知らないけど、なんとなく、似合ってるわ。」
「似合っているかな?」
「なんとなくね。」
そして、「私の好きな場所。海の見えるところ。」と朋子が言った。
「今、海が見えるね。」
「海を見ていると、何だか懐かしい気持ちになるの。」
「生命は海から誕生したからかな。」
「そうかもね。海を見ていると、そういったことが信じられる。」
朋子は、手袋をした手で、自分の頬を包んだ。
そして、目を閉じた。

つづく





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告白NO10

「でも、寒いわね。」朋子が言った。
「冬だから。」
「優一君の好きな場所は?」
僕の好きな場所は何処だろう?
僕は、いったい何に安らぎを感じるのだろうか?
「わからない。」僕は言った。
本当は、”今、二人でこうしている場所”と言いたかったけれど言うのを止めた。
「わからないの?」朋子が不思議そうに聞いてきた。
「さっきまで、分かっていた気がする。」
「でも、今、分からなくなったの?」
「今は、わからないことだらけ。」僕は笑った。
「そうね。生きるって、そんなものなのかもね。」
「いつか、わかりたい。」
「そういう日が、来るといいね。」
「うん。」
「私、宮沢賢治が好きなの。なんとなく恥ずかしくって誰にも言ったことないけど、
”銀河鉄道の夜”が特に好き。」
「読んだこと無いよ。」
「親友がね、川で溺れたクラスのいじめっ子を助けるために川に飛び込むの。」
「うん。」
「いじめっ子は、助かったけど、親友は死んでしまう。
 その親友と、銀河鉄道に乗って宇宙を旅するの。
 途中で、いろんな人に出会って、みんな途中で降りていくの。
 最後に二人きりになって、でも、主人公は最後まで親友と一緒に行くことができないの。」
朋子は、物語を思い出すように、ぽつりぽつりと話をした。
僕は、それを、黙って聞いていた。
「私、ダメね。
 全然、上手く説明できない。
 子供の頃から、感想文書くの苦手だったからな。」朋子は、そういうと小さく笑った。
「今度、読むよ。」
「そうして。」
辺りが、少しづつ暗くなっていった。
吐く息の白さが濃くなっていった。
「寒くないの?」手袋をしていない、僕の手を見て朋子が言った。
「少し寒い。」僕は、指先を動かしながら言った。
「少しなんだ。」朋子が、また、笑った。
「すこし。」僕は、短く答えた。
凍えた風が、二人を通り過ぎていった。
「歩く?」僕が、言った。
「そうしよ。」朋子はそう言うと、立ち上がった。
海に向かって大きく伸びをした。
今しかない。
今言わないと。
僕は、ありったけの勇気を振り絞った。
「ねえ。」
「なあに?」
「今度の日曜日。」僕は、言葉を切った。
次の言葉を捜した。
「今度の日曜日?」朋子は僕の言葉を繰り返した。
「一緒に遊びに行きたい。」
僕は、そう言うのが精一杯で、朋子の顔が見れなかった。
海を見ていた。
朋子は、黙っていた。
僕の心は、不安で一杯になる。
朋子は、何も言わずに歩き出した。
僕は、どうしていいのかわからずに、朋子の後ろを歩いた。

つづく

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さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

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