スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

寒椿NO6

家の電話が鳴った。
電話は、いつも突然に鳴る。
「もしもし。」僕が言った。
「もしもし。」女性の声だった。
それだけ言うと電話の向こうの女性は黙った。
電話を切るわけでもなく、短い沈黙が流れた。
それは、まるで沈黙という名の音が存在するような沈黙だった。
僕は、その声が朋子だと直ぐにわかった。
「朋子さん?」僕が先に沈黙を破った。
「うん。」朋子が言った。
僕の心が音を立てた。
心臓が高鳴った。
「どうしたの?」僕は、自分の心を抑えた。
また、沈黙が流れた。
「ごめんね。」今度は、朋子が沈黙を破った。
「もう
 会えないみたいなこと
 言っちゃったけど
 もう一度
 会えるかな。」
朋子は、途切れ途切れにとういうと、また黙った。
「うん。」
「ごめんね。」
「大丈夫。」
「再来週の日曜日。」
「空いている。」
「こないだの喫茶店。」
「わかった。」
そして、電話切った。
僕は、何も朋子に聞くことができなかった。
何故、会えないと言ったのか。
何故、電話をしてきたのか。
何故、また会いたいと言ってきたのか。
何も聞くことができなかった。
朋子にとって、僕という存在がどういうものであるのか。
僕は、その答えを知ることを恐れていたのかもしれない。
電話を切った後、僕の心の中には、甘い思いと切なさが同位したように入り混じり、心臓だけが高鳴っていた。

僕は、自分の部屋に入ると窓を開けタバコに火を付けた。
冷たい空気が部屋の中に入り込み、タバコの煙が揺れていた。

僕は、朋子のことを思った。
僕は、晴美のことを思った。
僕は、山崎のことを思った。
そして、自分の持っている弱さを思った。
僕は、僕の弱さに流されて、みんなを傷つけようとしている。
ふっと、そんな気がした。

つづく

にほんブログ村 小説ブログへ
少しでも気に入ってもらえたらクリックしてもらえると嬉しいです!


blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!


”春には春の花が咲く”出版しました。
↓Amazonの”なか見検索”で最初の数ページを読むことができます!! 
春には春の花が咲く Amazon なか見検索を見たい方 ここをクリック

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

寒椿NO7

朋子と、次のデートの約束までの2週間。
朋子から連絡が無かったし、朋子へ連絡もしなかった。
その間、朋子のことを忘れていた訳ではなく、毎日のように朋子のことは思っていた。
早く、会いたいと思った。
早く、声を聞きたいと思った。
朋子のことを思うとき、僕は、何故か赤い手袋を思い出した。
デートの間、あの手袋の中に有る朋子の手に触れたいと思っていた。
山下公園を散歩する恋人たちのように、朋子と手を繋いで歩きたかった。
赤くて可愛い手袋だったけれども、僕にとってそれはとても邪魔なものだった。

朋子と会えるまでの2週間という間に僕が出来ることは、ただ時間が過ぎ去るのを待つことだけだった。
そして、その時間の中で、朋子のことを考え続けた。
考えれば、考えるほどに、朋子が、僕のことをどう思っているのかがわからなかった。
僕は、2週間の間に学校に10回通い、空手道場に5回行き、新しい本を1冊読んだ。
そして、その間に、晴美からは1度だけ電話が掛かってきた。
「もしもし。長谷川と申しますけど。」
「晴美。」
「今日は、わかってくれたね。」
「わかったよ。」
「今日も、わかってくれなかったら、回し蹴りいれるとこだたわ。」
「怖いな。」
「口調が、ちっとも、怖がっていない。」
「そんなことないよ。おびえている。」
「うそ。私の蹴りなんて大したこと無いって思っているんでしょ。」
「晴美に蹴られたら、壁に人の形の穴が開くぐらい、吹っ飛んじゃうよ。」
「ほんと?
 それ、面白そう。今度、やってみようかな。」晴美は、笑いながら言った。
「複雑骨折で入院だよ。」
「ちゃんと、優しく介抱してあげるわ。
 包帯グルグル巻きにして、あ~んしてって、ご飯だって食べさせてあげるわよ。」
「なんだか、熱々のおでんを、無理やり口にいれられそうだな。」
「そんなこと言うと、本当にしちゃうわよ。」
僕達は、そんなとりとめの無い会話を一時間に亘って繰り返した。
そして、電話を切ると自分の部屋に戻った。
僕は、晴美と電話をしている間、朋子のことを告げようかずっと迷っていた。
朋子が、僕のことをどう思っているのか、晴美に確認をしてみようか迷っていた。
女性の考えていることは、女性に聞いてみるのがいいとも思っていた。
けれども、僕は、晴美に朋子のことを話すことが出来なかった。
話をするきっかけも掴めなかったし、話をしないほうがいいような気がなんとなくした。
結局、僕は、2週間の間、答えのわからない問いかけを何度も自分にながら、時計の針が進むのを眺めていた。

つづく

”春には春の花が咲く”出版しました。
優一が39歳になったときの恋の物語です。
↓Amazonの”なか見検索”で最初の数ページを読むことができます!! 
春には春の花が咲く 出だしを読むなら ここをクリック


にほんブログ村 小説ブログへ
少しでも気に入ってもらえたらクリックしてもらえると嬉しいです!


blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

寒椿NO8

僕達は先日と同じように、駅前の喫茶店で待ち合わせをした。
僕は、約束の時間の30分前に喫茶店に行き、いつもの窓側の席に座り、店内に流れるクラッシックを聞きながらタバコを吸った。
相変わらず、店内に流れている曲は、僕には、作曲者も曲名もわからなかった。
朋子は、この曲のことも知っているのだろうか?
そんなことを考えていた。
全てが、先日と同じ気がした。
先日と同じことを繰り返している。
そう思った時、朋子が現れた。
赤い手袋を外しながら、約束の時間の10分前に朋子が現れた。
「早いのね。」朋子は、半分以上減った僕のコーヒーカップを見ながら言った。
「さっき来たばかりだよ。」僕が、そういうと、朋子は微かに笑った。
「タバコって美味しいの?」朋子は、手袋を鞄に仕舞いながら言った。
「わかんない。
 なんとなく吸いたくなるときがある。」
「そうなんだ。」
「吸ったことある?」
「ないわよ。
 何でタバコを吸い始めたの?」
僕は、なんて答えていいのか迷っていた。
「なんとなく、吸ってみたかった。
 タバコを吸ったら、何かが変わるかなって思ったのかな。」
「変わった?」
「お小遣いの減りが早くなった以外は、何も変わらなかった。」
「そうよね。」
「早く、大人になりたかった。」
「大人になりたいの?」
「うん。」
「私は、大人になんてなりたくないわ。」
「なんだか、今の自分がとても中途半端な気がして・・・」
「中途半端?」
「大人でも、子供でもない。」
「まだ、高校生じゃない。」
「うん。わかっている。
 早く、自分で働いて自分の力で生きて行きたいと思っているんだ。」
「大学は?」
「わかんない。
 なにも具体的なことは考えていないんだ。
 ただ、漠然と、早く大人になりたいって思っているんだ。
 もっと、強くなりたいと思っている。」
「だから、タバコを吸ってみたのね。」
「なんとなく、大人へのパスポートのような気がした。」
「大人へのパスポートか。そういうと、かっこいいわね。
 でも、偉いわね。」
何故、僕が偉いんだろう?
僕は、ちっとも偉くなんかない。
僕の心は、朋子の一言、一言に反応をし混乱したり迷ったり喜んだりを繰り返していた。朋子は、話を続けていた。
「私、高校生のとき、大人になんてなりたくないと思っていた。
 ずっと子供でいたかったな。
 大人になると、色んな余分なことも考えちゃって、楽しいことより、辛いことのほうが 多いような気がして。
 ずっと、誰かに甘えていたかったのかな。」朋子は、自嘲気味に笑った。
僕は、その笑顔になんとも言えぬ違和感を覚えた。
それが、何なのかはわからなかった。
そして、もう一本、タバコに火をつけ、天上に向かって、白い煙を吐いた。
僕が、灰皿にタバコを揉み消すのを確認すると、「今日のデートは、私が案内するわ。」と朋子が言った。

つづく


”春には春の花が咲く”出版しました。
優一が39歳になったときの恋の物語です。
↓Amazonの”なか見検索”で最初の数ページを読むことができます!! 
春には春の花が咲く 出だしを読むなら ここをクリック


にほんブログ村 小説ブログへ
少しでも気に入ってもらえたらクリックしてもらえると嬉しいです!


blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

寒椿NO9

その日の空は、鉛色をした雲に厚く覆われていた。
北の国から吹いてきた風は、雪の匂いを微かに乗せて、僕たちを包むように通り過ぎて行った。
朋子は、僕に行き先を伝ないまま切符を2枚買った。
僕は、行き先のわからない切符を1枚、朋子から受け取ると、駅のホームで切符をポケットに仕舞った。
それは、今の自分のような気がした。
僕は、いつも目的地のわからない切符をポケットに仕舞ったまま、時間と言う電車に乗っているようだった。
電車の中でも、朋子は行き先を言わなかったし、僕も聞かなかった。
僕達は、宛てのない会話を繰り返すだけだった。
朋子に連れて行かれたのは北鎌倉だった。
売店も無い寂れた小さなホームには、観光客で溢れていた。
改札に向かう観光客の列の後ろに僕達は並んだ。
列は改札に向かってゆっくりと進んでいた。
並んでいる間、僕達は黙り、列の進む歩調に合わせゆっくりと歩いた。
北風が、ホームを駆け抜けていくと、皆、無口になり身体を固く震わせた。

改札を出ると、朋子は、北鎌倉の駅前にある円覚寺に向かった。
拝観料を払い山門をくぐると、鎌倉五山の一つ瑞鹿山の斜面に沿って、真っ直ぐに伸びた道有った。
道の所々にある庭には、幾本もの梅ノ木が植えられ、小さな紅や白の梅の花が咲き始め、梅の香りが微かに漂っていた。
「梅の花を見たかったの。
 でも、まだ少し早かったみたいね。
 来週ぐらいが本当は見ごろかしら。」朋子が言った。
僕達は、坂道を、まるで暗闇の中を足元を確かめながら歩くように、ゆっくりと登っていった。
「私、梅の花って好きなの。」朋子が言った。
僕は梅の花は、桜と違い、どこか、ひっそりと咲く花だと思った。
時折、強く吹く風に、地面に落ちた花びらが一枚、二枚と舞い上がっていった。
「静かに咲く花だね。」僕が、言った。
「おもしろい表現ね。」
朋子はそう言うと、梅の樹の前で立ち止まり、花弁を人差し指で軽く突っついた。
僕は少し離れたところから、朋子の仕草を見つめていると、急に、胸が締め付けれられる様に切なさが湧き上がってきた。
何処から来るのかわからない切なさに、呼吸が止まってしまいそうだった。
たまらなく、朋子が恋しいと思った。
苦しい程に、朋子のことを愛していると思った。
梅の香りが、僕の心をかき乱しているようだった。
ぼんやりと朋子を見つめて道の真ん中に立っている僕の横を、カメラを手にした観光客が、迷惑そうな顔をして通り過ぎていった。

つづく



”春には春の花が咲く”出版しました。
優一が39歳になったときの恋の物語です。
↓Amazonの”なか見検索”で最初の数ページを読むことができます!! 
春には春の花が咲く 出だしを読むなら ここをクリック


にほんブログ村 小説ブログへ
少しでも気に入ってもらえたらクリックしてもらえると嬉しいです!


blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

寒椿NO10

僕達は、境内の坂道を上って行った。
坂道は上るごとに狭くなり、やがて階段となり、並んで歩くことが出来なくなった。
道の両側には、幾つもの門があり奥には坊が建っていた。
そのほとんどが門から先は立ち入り禁止となっていた。
近くに有りながら、鎌倉のお寺をこんなにゆっくりと見たのは初めてな気がした。
中学の修学旅行で行った京都や奈良のお寺とは違った印象を受けた。
どこか、質素な気がした。
まだ、北風が吹いているのに、円覚寺の庭には少しずつ花が咲き始めていた。
春を待ちわびて、待ちきれずに咲いてしまったように感じられた。
そして、どの花も、どこかひっそりと、恥ずかしげに咲いているようだった。
僕達は、来た道を同じ距離だけ下ると円覚寺を後にした。

その後、東慶寺から建長寺へと行った。
まるで、小学校の遠足みたいだと思った。
どのお寺も、山の斜面を利用して建てられ、梅が咲き、水仙が咲き、名前の知らない花が咲いていた。
そして、どのお寺でも拝観料を取られた。
僕は、朋子の少し後ろを歩きながら、朋子の教えてくれる花の名前にただ頷くだけだった。
朋子の教えてくれた、花の名前を、まったく覚えられなかった。
聞いた後、一歩、歩き始めると、花の名前は僕の記憶から逃げるように飛び出していった。

建長寺から鶴岡八幡宮に抜ける道の途中、民家の生垣に花が咲いていた。
鮮やかな紅色をした花弁が幾重にも重なり合いっていた。
色が消えうせたような鉛色の空と北風の中で、その色はあまりにも鮮やかだった。
その花の前で、朋子は立ち止まると「寒椿」と言った。
「山茶花じゃないの?」
「寒椿と山茶花はとても似ているの。でも、違うの。
 とても似ているけど、違うのよ。」
「そうなんだ。」
「寒椿の方が花弁が多いの。」
空から白い結晶が一片、風に舞いながら降りてきた。
僕は、その白い結晶を目で追ったが見失ってしまった。
鉛色の空を見上げた。
「ねえ。」朋子が言った。
「なあに?」
「寒椿の花言葉知っている?」
「知らない。」
「何だと思う?」
僕は、寒椿の花をじっと見つめた、けれど、言葉を思いつかなかった。
「似たもの同士?」僕は適当に言った。
「なにそれ?」
「山茶花に似ているから。」
「違うよ。ほんと、時々、おもしろい発想するわね。」
「違うか。ヒントは?」
「う~ん。そうねえ。」朋子は、顎に手を当ててロダンのように考えていた。
「寒椿の咲く時期は、11月~2月なの。
 他の花が咲かない時期にひっそりと咲くのよ。」
「他の花が咲かない時期に咲くか・・・
 と言うことは、変わり者?」
「違うわよ。」朋子は笑いながら言った。
「変わり者って。そんな花言葉聞いたこと無いわ。おっかしい。
 ひっそりと咲くのよ。ひっそりと。」
「じゃあ、日陰者?」
「違うわよ。お願いだから、何とか者から思考を離して。
 ほんと、面白い発想するわね。
 ひっそりを漢字2文字で表現してみて。」
「密談?」
「それは、ひっそりじゃなくってヒソヒソでしょ。」
「わからない。」
「謙譲。」
静かに雪が舞い始めた。

つづく



”春には春の花が咲く”出版しました。
優一が39歳になったときの恋の物語です。
↓Amazonの”なか見検索”で最初の数ページを読むことができます!! 
春には春の花が咲く 出だしを読むなら ここをクリック


にほんブログ村 小説ブログへ
少しでも気に入ってもらえたらクリックしてもらえると嬉しいです!


blogram投票ボタン

ランキングアップにクリックお願いします!

人気ブログランキングへ クリックお願いします!

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

さとうそら

Author:さとうそら
2009年12月に、本を出版しました。
タイトル「春には春の花が咲く

カテゴリ
小説を読むときは、かくれんぼ から読んでください。
最新コメント
ランキング
ランキングアップに協力を!! どれか一つでもクリックしてくれると嬉しいです!!
訪問をお知らせください
おきてがみ
ブログパーツ
カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
小説・文学
4628位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
オリジナル小説
1209位
アクセスランキングを見る>>
yahoo
人気記事
表示は新着順なので、ブログの記事に直接リンクしてどんどん登録してください。
最新記事
最新トラックバック
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ
アクセスアップサービス
月別アーカイブ
フリーエリア
マイクロアド
時間があったらクリックたちよりしてね
おこづかいゲット!
ペット
自動リンク
自動でリンクが増えていきます
検索フォーム
NINJA
簡単にポイントたまります。
忍者アド
植林活動
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
ブログ広告
ブログ広告ならブログ広告.com
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。
サンプル・イベント・モニターならBloMotion